遠距離と規則にも負けず、防大生の彼と付き合っていたわたしですが、私には行きたい場所がありました。
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いつも通り、週末のデートの約束をしていた時 思い切って、その思いを彼に告げてみました。
「横浜にいこうか?東京もいいね」
「ねえ、わたし、横須賀にいってみたいな。」
わたしの言葉に、スマホ越しに彼が困っているのが、手に取るように分かりました。
「え、何もないからつまらないよ。」
いつもの返事です。
彼は横須賀に来られるのを何となく嫌がっているようか気がするんです。
折角、彼が住んでるところで観光地ならみてみたいのに。
今回こそは・・・
「それでもいいよ!東京はいつもいるし・・・横浜も・・・お願い~!」
余りのしつこさに根負けしてくれたのか、
「わかったよ」
彼のOkの返事を得て、今週のデートは横須賀を案内してもらえることになりました。
横須賀デートを嫌がっていた理由
土曜日、念願の横須賀です。
はじめて乗る、赤い電車。待ち合わせをしている「横須賀中央」に降りると、改札のなかに早速、彼の姿を見つけました。
「おはよう!もう来てたの?」
「うん。俺も一本で来れるとこだから」
「あ、そっか、」
いわば彼ら防大生の「庭」なのかな。
いつものように優しそうに笑っている彼だったが、なんとなくいつもと違うような気がした。
「じゃあ、横須賀だから海軍カレー食べに行こう」
「おお!たべたいー!」
ちょっとした違和感も楽しさで吹き飛んでしまった。
海軍カレー、日露戦争で使われた戦艦が鎮座する三笠公園、日用品を買ったりするという商店街、案内してもらいながら横須賀という町は「制服」が非常に多い事に気付く。
黒や白の海上自衛隊、米軍の迷彩服、黒と赤の高等工科学校、彼に見かける度に聞きながら、何となく識別していく。
「あっ」
彼がいやそーな顔をした。わたしもその方に目を向ける。人混みなので、頭ひとつ大きい彼に見えるものが見えなかった。
「おー!おい!その子が例の?!」
「おいおいおいー!」
元気のいい声だった。やっと目の前まで声の主たちが来た。
濃いブルーの制服の男のひとたちだ。
彼以外に初めて見る”防大生”だった。
体育会系ならでは?高校生並みのシャイさ・・・?
彼はさっと目の前にたつとしっしと手をやっている
「いいから、いいから、じゃあ学校で~」
「なんだよ!それ!」
「へえ~へえ~お邪魔しました~」
彼がぐいぐい商店街を歩きだしたので、彼の友人?の防大生たちも交差するように行ってしまった。
ちらちらとこっちを見ていた、挨拶しなくていいのかな、何事も無かったように、彼は歩く。
「友達?」
「うん。同期、うるさくてごめん。ちょっと歩くけど、公園にいこう」
話題もそこで終わってしまった。
(紹介してくれないのか…)
なんとなく、付き合ったら彼女・彼氏は友達に紹介するものだと思っていた。
(彼にとっては友達にも紹介できない存在なのかな)
毎日会えないせいか、寂しさなのか、なんだかいじけた気分になってくる。
内心悶々としながら暫く歩くと、着いたのは思わず声が出るような綺麗な場所だった。
「凄い!船がいっぱい」
「護衛艦だよ」
夕日に照らされた海、グレーの大きな”船”、整備された歩道、薔薇の咲いた公園、大袈裟かもしれないが人生で一番綺麗な公園に出会ったような気がした。
わたしのテンションに海を見慣れているのかちょっとびっくりしながら彼も笑ってくれていた。
「さっきはごめんね」
「え?」
海が目の前に輝くベンチに腰かけて、一日中歩いた足を休めていたら彼がぽつりと呟いた。
「同期、うるさかったでしょ。」
「そんな事ないよ。びっくりしたけど、貴方の友達ならもっと話してみたいな。」
「…それはちょっと…」
彼の、本当に嫌そうな顔だった。
そして、わたしはおおきな不安を抱くことになるでした