遠距離恋愛をする私と、防大生の彼。
彼とのはじめて長期休暇を迎えました。
待ちに待った夏休みです。
高校生と違い、大学に入って行動の自由度が高くなり、旅行に行くこともできます。
旅行雑誌を見ながら、ついカップルおすすめのページをみたり…。
京都や奈良、北海道もいいなあ…
着物レンタルや、美しい町並み、おいしい料理、おそろいのお守り…
空想が広がります。
たしか、防衛大も夏休みは2週間くらいあるはずだから、行けるはず!
と、彼に会える日を指折り数えながら、私の心はすでにまだ見ぬ観光地へ羽ばたいていました。
防大生に立ちはだかる「行動計画」の壁!
長期休暇の数日前、「部屋会」を終えてちょっと陽気な彼と久しぶりに顔を合わせました。
テレビ通話とはいえ、やっぱり嬉しい。
画面越しに、わたしが広げた旅行雑誌をみて彼は申し訳なさそうな顔をしました。
その表情に嫌な予感を覚えながら、新幹線で二時間ほどのまだ余裕のありそうな観光地をいくつか見せてみました。
すると、
「ごめんね、旅行には『行動計画』が必要で…」
「えっ…」
嫌な予感的中です。
「東京とかなら思い付きの行動OKなんだけど、二時間以上となると、難しい…」
「な、なんで?」
「自衛隊はいつ、どこに、いるのか明確にする必要があるんだ。災害が起こった時とか、基地に帰らなきゃならないから」
「でも、まだ大学生なのに…」
何度も「大学生ではない」と言われたのに、また口走ってしまいます。
「防大生だから…」
そしてまた、彼に申し訳なさそうな表情をさせることになるのです。
「でも前もって、行動計画を申請すれば海外旅行もいけるから。」
「うん…やっぱり厳しいんだね」
「俺たちは公務員でもあるからね」
自衛官が旅行するには【行動計画】が必要
彼によると自衛隊は長距離移動・海外旅行は『行動計画』なる書類が必要なのだそう。
『いつ、どこで、なにをしているのか』
を明らかにして、有事の際に人員を召集できるようにするためのものらしいです。
確かに、災害のときに自衛隊員全員がどこにいるか解らないなんてなったら困るのでしょう。
でも、民間の会社員だってトラブルの際は呼び出しがあるはず。
しかしこうも厳格に『行動計画』を出すのはやはり国家公務員となるべく育成されている防衛大学校の特殊性なのかもしれません。
今時私用携帯に業務時間外に電話することを禁止している会社もある世の中です。
でも、彼の様子を見るに私用携帯にもガンガン防衛大の業務連絡がくる。
やっぱり、防衛大学校も、自衛隊も普通じゃない。
「ごめんね、とお子さん…。今度は絶対行こう!」
「うん…ありがとう」
彼の気遣いが申し訳ない休暇前でした。