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防衛大学校卒業式(前編)

とうとうこの日がやって来てしまいました。

私は春からの新社会人生活に備えて用意したスーツに身を包んで、京急線に乗り込みました。

不思議と心は安定して居て(彼の親御さんに会ったら何と言おうか…)という方が気がかりでした。

前の記事>>「防大生」もあと少し!防衛大学校卒業式とそれぞれの進路

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全国から人が集まる当日の小原台

「お早うございます。本日はお邪魔してすみません」

「ああ〜今日は来てくれて有難うね。あの子も喜ぶわ」

遠方からいらしたご両親と『横須賀中央駅』で合流し、今日のお礼と進行を話しながら、ふと周りを見ると、スーツ姿の土地に慣れない様子の人が多い様な…

(開校祭のときみたい)

でも、心なしかみんな寂しそうな表情に見えました。

 タクシーで防衛大学校に到着すると、

「えっ?!凄い人ですね…」

正門前に並ぶ大勢の人に圧倒されました。

流石に開校記念祭などと違い、みんな家族なのですが、4学年300人ほどの家族なので膨大です。

私は家族ではなく、「招待状」での入場なので、違う列へ案内され、すぐに入場出来たので、皆さんの視線が少し痛かった記憶があります…

入場して、その時の防衛大学校は、シーンと静かだった事を覚えています。

招待の入場は、式開始まで大きめの会議室の様な部屋で、お茶まで職員の方に出して頂き、物凄く恐縮しました…。

(彼の部屋に行っちゃダメなのかな…?)

当日は忙しいから連絡がつかないと言われていたので、駄目元で連絡をして見ると、意外にも直ぐに返事が来ました。

『え?来なよ。いいよ』

この緊張の時間は何だったのか…足早に彼の大隊の建物に向かうと、防大の制服に身を包んだ彼が段ボールだらけの部屋にいました。

「…見て〜腕、この前の卒ダンであの腕の桜で引っ掛かっちゃって…」

「うわ、本当だ…」

ドレスでむき出しだった腕に、彼の腕の学年証(?)の桜が引っかけられ、傷になって居ました。もう、こんな無駄話をしている暇はないのに、どうでもいいことばかりが口から溢れてきます。

「楽しかったね」

彼が目を細めてそう呟きます、今まで会えない日の方が多かったはずなのに、思い出はいくらでも思い出せました。

「そういえば、帽子にお金は入れたの?」

「うん。少ないけどね」

卒業式で回収される帽子には、数百円〜一万円挟んでおく文化が少数の学生には受け継がれているらしく、回収係の下級生の楽しみでもあるそうです。

彼がゆっくりと帽子を被ります。今日は一段と金色の飾りが輝いて見えました。

いよいよ、式が始まります。

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総理大臣や偉い人たちだらけ?!特殊な卒業式

式が行われる記念講堂に彼のご両親と向かいながら、お父様が

「さっき一服しに行ったら、桜3つ付けてるのに喫煙室でぼんやりしてる子がいて聞いたら卒業式には出ないんだって言ってたよ」

「あら…」

お父様のコミュ力にも驚きましたが、彼が前に話していた民間企業行きなのか、はたまた留年なのか、同じ四年生でも当日の過ごし方は多様のようです…。

記念講堂に入ると、家族席とは違う席へ案内されてしまいました。

(…え?ここ?)

そこは舞台の直ぐ近くで、周りは制服姿の自衛官だらけでした……

恐る恐る席に着くと、彼、彼女達は自衛官なので、入場や礼の時は起立しなければならないようで、何かのたびにキビキビと行動していて非常に格好良かったです。

(もちろん私も国歌斉唱や入場のときは起立しました!)

式が進行し、彼らが入場しても、みんな同じような雰囲気で、加えて身長順なので、あれかな…?くらいしかわかりません。

やっと彼を識別できたのは、卒業証書を受け取るとき、名前を一人一人読み上げられるのですが、そのときでした。

この卒業証書授与のために壇上へ向かう時の起立と帽子を置く動作が、ロボットみたいに揃っていて、すごくかっこいいので行かれる方はガン見してください…!

(わー総理大臣が話してる…)

当たり前ですがわたしの卒業式では見られなかったVIPが大勢来て居ました…

改めて国の機関であり、彼らは『大学生』ではないんだなと実感させられます。

訓示が終わると、有名な『帽子投げ』の時間です。

報道カメラマンは慣れているのか、通路のすみの方へと移動を始めます。代表学生のスピーチの後ろで、彼らがジリジリと足を踏み鳴らしているように見えます…。

VIPの警護の方らしき自衛官が美しい動作で回れ右を始めました。

 

「○○期、わかれっっ!!!!!!!!」

代表学性の叫びと共に、先程の自衛官は回れ右を完了し、隅に姿勢よく立って居ました。

会場の緊張感を破るように卒業生の咆哮の様な歓喜のような声と共に、帽子が宙へ舞いました。

同時に椅子を弾き飛ばしたり、ぶつかるような声が響き、先程報道陣や自衛官が立っていた通路には卒業生の大群が駆け抜けて行きました。

 

まるでNHKで放送している大自然映像系番組のヌーの大群のようでした……。

なんで走っているかと聞けば、陸海空の制服に着替え、「任命式」に臨む為だそうです…

恐るべし、防衛大学校卒業式です…。

次の記事>>防衛大学校卒業式(後編)

防大生との出会い方を探している女性へ
この記事を書いた人
小原台とお子
小原台とお子

大学1年生の頃に防大生とお付き合いした経験談を書いています。
同じような境遇の女性のために「防大生との恋愛」を綴ることで、少しでも前向きになって貰えたらいいなと思っています。

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