防大生である彼との初デートは、知らない世界を垣間見るような時間でした。
彼の話す”防衛大学校”の話は、どこか違う国の話を聞いているような、ずっと昔の苦労話を聞いているような、驚きと感心をもたらしくてくれました。
自分と変わらない年代の人がそんな学校で信念を持って頑張っていると思う
自分の苦労知らずさが恥ずかしくなったり…。
その夜、彼は私の住む女性専用マンションまで送ってくれました。
私は田舎育ちだったので、都会の夜道にビビって足早にいく帰り道でしたが、
この日は彼がいたので何の不安もありませんでした。
「防衛大に入ってから、こんなにゆっくりする時間もありませんでした」
「とても楽しかったです」
「また会いたいです」
ありきたりな言葉でも彼のハキハキとした口調が、不思議とすんと私の胸の中に入ってきます。
そして、三連休を使った初めてのデートは、次の日の明日も会う約束をして終わりました。
念願の彼氏は「防大生」!結婚を前提としたお付き合い!?
そして連休最後の夜、ついに私は念願の彼氏が出来ました。
彼は、デートの中でこんな風な告白をしてくれました。
「とお子さん、結婚を前提に付き合ってくれませんか?」
という、現代の二十歳の男性が言うには不釣り合いすぎるどっしりした台詞に、私はにべもなく頷きました。
彼氏がほしい!と思っていたし、“防衛大”はどんなところか、彼はどんな人か気になったのです。
そうして私はついに彼氏が出来ました。
「防大」の「壁」も知らずに…。
顔のみえない彼氏、溢れる疑問…
「彼氏が出来たよ!!」
久しぶりの恋愛に浮き立つ私は、早速仲の良い友人たちに触れ回りました。
「へ~、学外だよね?」
「どんなひと?」
とりあえず社交辞令的に聞き返してくれる優しい友人たちに
「防衛大のひと!スポーツマンって感じの見た目!」と、返すと、
「おおーー!?」と、やっぱりみんな「謎めいた」「好奇心」「なにそこ」な、目をしました。
「ねえ、デートはどんな感じなの?やっぱりジムとか?」
「…あ、実はね、まだ二回しか会ったことなくて、それも、ここ2週間…会ってない…」
「えーーー!!!!」
「な、なんで?それ、彼氏なの?」
私がいちばん気にしていることである。
“告白”という行事が済んで、
私の彼の呼び方は「〇〇さん」から「〇〇くん」へ変わった。
そう、私の彼氏になったのです。
のに…!
あの3連休のデートの日、告白の日以来、私は彼の顔を見ていません。
「訓練、勉強、部活がある」と彼は伝えてくれてはいます。
それから、LINEさえも「おやすみ」だけになっていました。
よほど忙しいのか、なぜ忙しいのか、なぜLINEもできないのか、会うこともできないのか、疑問ばかりが出てくるのに、わたしはそれを聞けませんでした。
「彼氏」ってこうだったかな?
「え?それ、彼氏なの?」
友人たちのこの一言が、付き合って2週間で私に突き刺さりました。